機能性振戦は、機能性運動障害の中で最も一般的なタイプです。
機能性振戦では、体の一部(通常は腕や脚)が制御不能なほどに震えてしまいます。これは、神経系が正常に機能していないために生じる症状であり、神経疾患によるものではありません。
機能性振戦は、パーキンソン病や本態性振戦などの振戦と間違われることがあります。
パーキンソン病とは異なり、機能性振戦は、神経系の働きに可逆的な問題があることが原因です。
つまり、機能性振戦は、「魔法の治療法」はありませんが、改善することもあれば、完全に治ることもあります。
振戦とは、腕や脚、あるいは頭などの身体の一部がリズミカルに動く症状です。機能的振戦は1日のうちに現れたり消えたりします。振戦は時に激しくなり、速度が変化することもあります。
機能性振戦があると、動きをコントロールできないため(つまり、不随意運動)、障害を引き起こす可能性があります。
機能性振戦は、突然始まることが多いですが、徐々に始まることもあります。機能性振戦は、以下のような状況で発生することがあります。
1. 手足の物理的な損傷や手足の痛み。複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome)の一部として機能性振戦が起こることもあります。
2. 以下のような医学的な問題から振戦が発生した場合
a. 薬剤の副作用
b. けいれんのような発作を伴う失神
c. 高熱や悪寒戦慄を起こす感染症
3. ”恐怖感”やパニック発作を起こした後
4. 「解離」(意識が遠のく)と呼ばれる症状に付随して発症。恐怖を感じていなくても起こることがあります。
5.「本態性振戦」のような軽度の振戦が機能性振戦のために増幅されている場合
機能性振戦の診断は、通常、神経内科医が行います。診断は難しく、振戦を引き起こす神経内科疾患、多くの稀な疾患も含めて、の幅広い専門的知識を必要とします。
機能性振戦を診断する際にチェックする項目の例を以下に示します。
1. 健側の腕や脚の動きを真似ると振戦が一過性に消失したり、リズムが変化することがあり、”同調性テスト”と呼ばれています。
2. 健側の腕や脚でリズミカルな動きをすることが難しいこと
3. 振戦がない時期があること
4. 振動数が変わること(振戦の”速さ”の変化)
5. 他者が振戦している腕や脚を静止させようとすると、震えがひどくなること
FNDをはじめとする機能障害やその他の神経症状をもつ患者は、他人には見えないが自分で体の内部で感じる一種の震えを経験することがよくあります。これは「体内の振戦」と呼ばれることもあります。また、人には見えないごくわずかな震えが生じることもあります。
体内の振戦は、時に非常に厄介で、体内の振戦を知ることは重要です。FNDのメカニズムは脳が動きや体の内部感覚を認識する際の「ボリュームのつまみ」の増加に関連していると考えられます。
実際、両手を前に出したときに、ごくわずかな震えがあるのは普通のことです。これは生理的振戦と呼ばれています。体内の震えは、脳がそのプロセスを認識し、時間の経過とともにそれが「増幅」されるために生じます。
このサイトの治療に関するページをご覧ください。
自分の診断が正しいと思えることが重要です。そうでなければ、ここで提案するリハビリテーションを実践するのは難しいでしょう。
機能性振戦ではないと感じた場合、どのような根拠で診断がなされたかを確認する必要があります。上記のような臨床的特徴があるはずです。もしそうならば、あなたが受けた診断を信じてみてはいかがでしょうか?
機能性振戦が現れることには、あなたがストレスを感じる必要はありません。実際、機能性振戦は、リラックスしている時や何も考えていない時に最も顕著に現れます。医師が「ストレス性のもの」と示唆したため、診断を拒否したのではありませんか?- もしそうであれば、何か誤解があったのかもしれません。機能性振戦の患者さんの多くは、ストレスが原因であることがわかっていますが、そうでない人もたくさんいます。ですから、ストレスがあったかどうかは、診断には関係ありません。
(Glenn Nielsen, Institute of Neurology, Londonの理学療法士に感謝します。)
これらはすべて繰り返し練習する必要があり、最初は不可能または難しいと思われるものが多いでしょう。脳の中の「習慣」を変えようとしているのですから、簡単にはできません。
このことをよりよく理解するために同調テストを行う医師のビデオを見てください。(video 1 + video 2)
3. 筋肉に力を入れたりリラックスさせたりしてみてください。機能性振戦は、多くの場合、腕や脚のすべての筋肉を一度に収縮させることで起こります「漸進的筋弛緩法」と呼ばれる技法を学ぶことで、あなたは筋肉の力の入れ方をよりコントロールできるようになるでしょう。
4. 漸進的筋弛緩法を行う際には、鏡を見ながら行ってください。そうすることで、脳 がどこで間違っているかを知ることができるかもしれません。
5. 座っているときに足が「跳ねて」しまう場合は、できるだけ長く足を床につけておく練習をしてみましょう。変な感じがするかもしれませんが、これが正常な位置であることを脳に思い出させることができます。また、誰かの真似をして動きを変えてもらい、「正常な」足を叩いてみるのもいいでしょう。椅子の座り方を変えたり、体重のかけ方を変えたりすることも効果があります。
治療のページでは、あなたに適した特定の治療について詳しく説明しています。機能性振戦は、患者さんによっては、特に不安と関連している場合があります。
一般的に、不安感は振戦そのものに関連しています。「人は私のことをどう思うだろう?私は全身が震えるのだろうか?それは恥ずかしいことなのだろうか?しかし、これらはやはり不安の感情です。
機能性振戦の患者さんの多くは不安を感じていませんが、もし不安を感じているのであれば、そのことを直視し、過剰な心配を抑制するための具体的な治療を受けることが大切です。それが役に立つこともあります。
患者さんの中には、振戦のエピソードによって、表現しにくい緊張感やめまいのような症状の蓄積が「解消される」と報告する人もいます。患者さんは震えが起こることを望んでいるわけではありませんが、震えが起こると(「エピソード」として起こる場合)、その感情が軽減されるように見えることを認識しています。もしあなたがこれに当てはまるのであれば、治療を受けている医療専門家に相談してみるのもよいでしょう。
催眠下では、振戦が改善することがあり、自宅で実践できる自己催眠を学ぶことができます。
[翻訳者:植田恵介]