FND appをダウンロード Android Aapp IoS App
FNDのリンク集 フィードバック ご寄付 言語
  • 日本語
Home / 症状 / FND Symptoms / 機能性認知機能障害

機能性認知機能障害

機能性認知機能障害(Functional Cognitive Disorder)とは、脳が必要な働きや機能を果たさないときに起こる、記憶や集中力の問題です。機能性認知症状は、脳の病気や損傷によって起こるのではなく、脳から生じるものです。

機能性認知障害の方は、どのような悩みを抱えているのでしょうか?

人によっては、比較的軽い機能性認知症状があり、時には他の健康問題と併発することもあります。また、記憶症状がその人の日常生活に影響を与える主な問題であれば、機能性認知障害という言葉が使われる人もいます。機能性認知症状は恐ろしいものです。仕事や人付き合いなどの通常の活動が難しくなることもあります。

また、アルツハイマー病のような認知症が原因かもしれない、あるいは怪我によるダメージが原因かもしれないと心配する人もいます。

記憶や思考の問題が脳の病気や損傷の結果なのか、それとも機能性の認知症状なのかを判断するためには、慎重な評価が必要です。

しかし、機能性認知症状を、自信を持って正確に診断することは可能です。明確な診断を受けることで、症状を改善するための方法を見つけることができます。

このページは、この症状について私たちが知っていることを共有し、何が起こっているのかを理解するのに役立つアイデアを提供するために作成されています。

機能性認知症状はどの程度あるのでしょうか?

機能性認知症状はよくあることです。しかし、最近まで医師は多くの異なる用語を用いてそれらを表現していたため、混乱することがありました。

認知症が疑われ、メモリークリニックに通院している患者を対象とした調査では、24%が認知症ではなく、機能性認知症状を有している可能性が高いことがわかりました。

機能性認知症状は、それ自体で起こることもありますし、機能性神経障害(FND)の他の症状を持つ人にも非常によく認められます。FNDとは、神経系の機能における同様の問題から生じる本物の症状で、手足の脱力や失神など様々な神経症状について付けられる病名です。また、線維筋痛症などの痛みを伴う疾患や、強い疲労感を伴う疾患にもよくみられます。また、不安や抑うつを伴うこともあり、時にはその一部となることもあります。これについては、後ほど詳しく説明します。

機能性認知症状の原因は何ですか?

機能性認知症状は、いくつかの異なる理由で起こる可能性があります。多くの場合、複数の根本的な原因が存在します。

機能性認知症状は、「突然」起こることもありますが、怪我や外傷の後に始まることもあります。頭部外傷や軽度外傷性脳損傷(脳震盪と呼ばれることもあります)は、一般的な引き金となります。

機能性認知症状を引き起こすほとんどのものは、注意と呼ばれる一連の脳プロセスを妨害することによって起こります。

私たちの学習能力や情報蓄積能力は膨大ですが、注意力には限界があります。私たちが一度に集中できるのは、世界のほんの一部だけです。新しい情報に注意を向けることができなければ、その情報を学習し、記憶することはできません。
注意の集中を妨げるものの例
この図は、機能性認知症状において、「自動」思考から「努力型」思考に切り替わることで、注意を使い果たし、さらに記憶力や集中力の問題をより引き起こすという悪循環に繋がることを示しています。
このような努力型の認知的活動の全てが悪循環を生み、さらに記憶障害を引き起こします。
機能性認知症状のある人は、自分が抱えている問題を詳しく説明できることが多いです。あなたのことをよく知っている他の人たちからの話を聞くことは、役に立ちます。機能性認知症状のある人は、他の人よりも記憶について心配することがよくあります(常にではありませんが)。認知機能検査は、医師や心理学者が記憶障害の重症度を測定するためによく利用します。機能性認知症状のある人の中には、認知機能検査において健常者と同じように良い成績である人もいます。しかし、機能性認知症状のある人の中には、テストに苦労して、かなり悪い点数を取る人もいます。

機能性認知障害、認知症、軽度認知障害の違いは?

機能性認知障害と認知症は、症状が似ているように見えますが、原因が異なります。認知症では、脳の病気が進行した結果、記憶に関わる脳部位が損傷することで記憶症状が起こります。機能性認知障害では、症状は脳の処理の変化から生じるものであり、脳の損傷や疾患によるものではありません。

「軽度認知障害」または「MCI」は、認知症ではないものの、将来的に認知症を発症するリスクが高い可能性がある認知障害の患者さんを表す言葉として、医師が使用することがあります。しかし、「軽度認知障害」は、あくまでも症状や困難さを表すものであり、特定の病気の診断名ではありません。

重要なのは、機能性の認知症状がある人の中にも、特に記憶検査で苦労している場合は、「軽度認知障害」と言われることがあるということです。しかし、医師が機能性認知症状であることを明確に指摘できる人は、他の軽度認知障害者よりも将来的に認知症になる可能性は低いです。

機能性認知症状を確認することは、本当に重要です。なぜなら、認知症になるリスクについて医師が伝える情報が変わるからです。また、症状を改善するための具体的な治療法が見つかるかもしれないからです。

気のせいでしょうか?

機能性認知症状は現実のものです。それらは「付け焼き刃」でも「想像」でも「全て気のせい」でもありません。

人によっては、抑うつや不安が機能性認知症状の発症を助長する重要な要因になることがあります。また、一般的にうつ病や不安症でない人でも、認知症状について心配することで症状が悪化し、回復が難しくなることがあります。機能性認知症状のある人の多くは、うつ病や不安症ではありませんが、うつ病や不安症も存在する場合には、これらの問題を治療することで症状が改善される可能性があるため、うつ病や不安症があることを認識することは重要です。

診断に自信はありますか?

自分が正しい診断を受けていると感じることが重要です。そうでなければ、ここで提案する自己管理戦略を実践することは難しいでしょう。

もし、自分に機能性認知症状がないと思うのであれば、その診断がどのような根拠で下されたのかを確認する必要があります。通常、あなたの症状のパターンがこの疾患の典型的な特徴と一致するからです。ストレスがなくても、機能性認知症状は認めます。もしかしたら、医師が「ストレス関連」と示唆したため、診断が腑に落ちなかったのではありませんか?もしそうであれば誤解があったかもしれません。私たちは、症状の原因としてストレスがある患者さんもいることは知っていますが、そうでない患者さんも多くいます。ですから、ストレスを受けたかどうかは診断に関係ありません。

必要であれば、診断を下した人に戻って話を聞いてみてください。なぜそのような診断をしたのかを理解し、その診断にあなたがより自信を持つことができるかどうかを確かめてください。

セルフヘルプへの戦略

1. インフォメーション
どのような症状であっても、それを管理するための最初のステップは、それをよりよく理解することです。このファクトシートを読むことは、その第一歩です。なぜ記憶がうまくいかないのかを理解すればするほど、記憶障害にうまく対処する方法を身につけることができるかもしれません。同じ機能性神経障害の一部として他の神経症状がある場合は、このウェブサイトでその症状について読むと、何が起こったのかもっと理解できるようになるかもしれません。

2. 悪化させる要因を管理しましょう
症状を悪化させている要因を特定し、可能であればそれを改善することが重要です。

3. 記憶力の低下や忘却は、通常の体験の一部であることを心に留めておいてください。
自分の記憶力に異常なほど高い基準を設けないことが重要です。記憶力の低下、「自動操縦」状態での短い空白時間、過去の出来事に関する名前や重要ではない詳細なことを忘れることは、すべて完全に正常な体験です。記憶力や集中力が非常に高いレベルにある人は、小さな欠落に気づいたり、心配になったりすることが多いかもしれません。

4. 記憶力を使い続けましょう
機能的認知症状のある人の中には、当然ながら、自分が困難だと思う仕事を避けるようになる人がいます。例えば、買い物をするとき、忘れ物がないように家族に代わってもらうかもしれません。あるいは、会話の中で単語を探すのに苦労するのを恐れて、人と集団で話すのを避けるようになるかもしれません。通常、このような対処法は、長期的に見れば有益ではありません。

リストを書いたり、携帯電話のアラームを使ったりするなど、記憶補助ツールを使うと、特定の作業をするときに便利です。しかし、できるだけ通常の状態に近い形で記憶力を使う方がよいので、これらに依存しすぎないようにしてください。リストなどを作成すると、注意が散漫になり、かえって認知症状が悪化することがあります。リストを作るのを減らし、記憶力を使うことにもっと自信を持てるようにする手助けが必要かもしれません。

5. 記憶に関する自分の「自動思考」を変えることを学びましょう
何かを忘れたり、間違えたりしたときに思い浮かぶ自動思考に気づくことを始めてみてください。これらの思考に挑戦することで、あなたの記憶がより正常に機能するようになります。

例えば、次のようなことです。

[古い思考] 18ヶ月あっていない人と道端でばったりあったが、名前を忘れてしまった。→[新しい思考]名前を忘れることは至極普通なことだ。全ての人の名前を簡単に思い出せる人なんてわずかしかいない。

[古い思考] メモなしに買い物リストを全て覚えなくてはいけない。→[新しい思考]そんなことは正常ではない。メモなしに買い物リストを覚えられる人はほとんどいない。

[古い思考] 私は認知症になるにちがいない。日に日に記憶力が悪くなっている。→[新しい思考]認知症の人は通常は他の人よりも自身の症状には気づくことができない。記憶障害に気付いていることは、それだけ自分が認知症ではない可能性がある。

[古い思考] 脳がちゃんと働かない。悪化させないために休むべきだ。→[新しい思考]記憶力を使うことや物事に集中することは脳がまた正常に働きくことを助けるだろうし、そのようなことは脳の働きを悪化させないだろう。

その他の治療法

このような自助努力が有効な人もいますが、指導を受けずに自力で進んでいくのは難しいことが多いことも知っています。今のところ、機能性認知障害に最も効果的な治療法については、あまりエビデンスがありません。私たちは、認知行動療法(CBT)が、痛みや疲労のような他の持続的な身体症状を持つ人々を助けることができることを知っています。

このような治療法は機能性認知症状にも役立つ可能性がありますが、それについては我々がもっと学ぶべきことがあります。

自助努力で治らないのはあなたのせいではありませんし、治らないということではありません。神経科や精神神経科の中には、CBTを紹介してくれるところもあるかもしれません。あなたの場合、さらにどんな治療が有効か、担当医に聞いてみてください。

より大きな視野で

機能性認知症状は、健康状態の「大きな絵」の一部である人もいます。機能性認知症状を持つ人の中には、機能性神経障害(FND)の他の症状も持っている人がいます。機能性神経障害は、神経の損傷ではなく、神経系の機能異常(ハードウェアではなくソフトウェア)の結果であるよくある症状です。

機能性認知症状のある人の中には、不安、うつ、心的外傷後ストレス障害などを併発している場合があります。うつ病や不安症は、症状そのもののストレスの結果であることもあります。

機能性認知症状は、線維筋痛症や複合性局所疼痛症候群などの慢性疼痛疾患においてよくみられます。

機能性認知症状は、頭部外傷後の「脳震盪後症候群」の人々にもよくみられます。これらの人々は、頭痛、めまい、光や音に対する過敏性などの問題も抱えている可能性があります。

機能性認知症状のある人の多くは、これらの他の健康上の問題はありません。そのためこれらのページがあなたに当てはまらない場合でも、気後れしないでください。しかし、もし当てはまるのであれば、これらの障害を理解している臨床心理士、神経科医、精神科医などの医療専門家と一緒に、あなたのために問題をまとめてみる価値があるかもしれません。

Joshの体験談

Joshは28歳で、特別支援学校で教務補助員として働いています。仕事中、他の職員がホールへ移動させる際に、誤ってテーブルで頭を打ってしまいました。気絶はしませんでしたが、負傷後数分間は意識が朦朧としていました。その後、数日間、頭痛、めまい、集中力の低下を自覚しました。明るい光に敏感で、非常に疲れを感じていました。彼はしばらく仕事を休みました。その後数週間で、めまいは治まり、頭痛も軽減され、仕事に復帰することができました。

しかし職場に戻っても、彼は記憶力と集中力に悩まされ続けました。以前は記憶力が良かったのですが、今ではリストを作らないと仕事を忘れてしまうようになりました。同僚と話した後、その会話の内容をほとんど忘れていることに気づくこともしばしばありました。クラスの子どもたちの名前を、よく知っているはずなのに、間違って呼んでしまうことがありました。頭がぼんやりして、自分が自分でないような感じがしました。思考が鈍くなり、何事も億劫になりました。

寝不足や頭痛がする日は症状が悪化しましたが、完全に体調が良くなることはありませんでした。毎日、仕事から帰るころには、疲れ果てていました。

彼は、このような困難を非常にもどかしく思い、事故で脳を損傷したのではないかと心配になりました。かかりつけの医師は、この症状はストレスやうつ病のせいかもしれないと言いましたが、彼は仕事が好きだったし、落ち込むこともありませんでした。

Joshは神経科医に診てもらったところ、彼の症状は典型的な機能性認知障害であると説明されました。彼は、記憶障害は脳の損傷によるもので、一生改善されないかもしれないと心配していたので、驚いていました。神経科医は、痛みや寝不足が脳の集中力を妨げると説明しました。彼は、睡眠を改善するためのリーフレットから、役に立つヒントを得ました。Joshの行動を一緒に見てみると、「大丈夫」と思った日に「やりすぎ」てしまう傾向があり、そのために疲れてしまっていることに気づきました。Joshは学校に相談し、勤務時間や職責を変更することで、この「boom and bust」のパターンを避け、徐々に仕事での活動レベルを上げていくように交渉しました。やがてJoshのエネルギーレベルは向上し、すべてが少し楽に感じられるようになりました。それでも時々、子どもたちを間違った名前で呼ぶことがありましたが、彼は、誰もが時々そうすることに気づき、それが起こっても心配したり恥ずかしがったりしなくなりました。

Jeanの体験談

Jeanは63歳の女性です。半年前にアルツハイマー型認知症で亡くなった母親の介護で、ここ数年大変な思いをしてきました。

彼女が最初に異変に気づいたのは、3ヶ月ほど前、銀行の自動支払機で暗証番号を思い出せなくなったときでした。それまではこんなことは一度もありませんでした。

彼女は会話中に “ぼんやり “するようになり、夫がすでに話したと主張することを思い出せなくなることもありました。彼女は、約束の時間に間に合わないと感じ、携帯電話にリストやメモ、リマインダーをたくさん使うようになったのです。もし、そうでなかったら、何度か約束を破っていたかもしれません。

毎日、部屋に入ると、何のためにそこにいるのか忘れてしまいました。これまで外出先で迷子になったことはありませんでしたが、「もしかしたら」と心配になった。夫に話すと、「運転は自分がするべきだ」「2人で出かけるのはやめよう」と言いました。

また、鍋を空焚きしてしまったのをきっかけに、料理をするのをやめ、電子レンジでチンするようになりました。そんなこんなで、ジーンは自分の症状がアルツハイマー病の初期症状であることを確信しました。寝つきが悪く、何時間も起きていると、次の日にやらなければならないことや、認知症が悪化したときに家族がどうしたらいいのか、心配になりました。

Jeanは医者に診てもらいましたが、家族を心配させたくないので、自分が認知症であると考えていることを家族には伝えませんでした。医師から記憶力テストを要求されたときは、ストレスがたまりました。主治医からメモリークリニックを紹介され、精神科医から「認知症ではない」と言われました。しかしJeanは記憶力を非常に悪くする何かがあると思っていたので、安心はできませんでした。

しかし、精神科医と再び話し合い、記憶力は非常によいことに気づき始めました。また、頭が混乱し、心配になることで、情報を取り入れるのが難しくなっていることにも気づくようになりました。彼女は、メモやリストをあまり使わなくなりました。買い物で少しミスをしましたが、予想していたほどではありませんでした。将来的に認知症になることを心配することはありましたが、Jeanはまた友人と会うようになり、最悪の事態を想定することもなくなりました。

Further information

www.headinjurysymptoms.org 機能性認知症状は、頭部外傷後に始まることがあります。このウェブサイトには、頭部外傷後の症状管理に関する情報とアドバイスが掲載されています。

www.good-thinking.uk 睡眠、ストレス、不安、気分の落ち込みなどのテーマについて役立つ情報やリソースを提供する、NHS認定のウェルビーイングサービスです。

機能性認知障害の科学的なレビューについては下記をご覧ください。

McWhirter L, Ritchie C, Stone J, Carson A (2020) Functional cognitive disorders: a systematic review. The Lancet Psychiatry 7:191–207.

解離性健忘(より期間の長い記憶喪失)

機能性神経症状を持つ患者が、例えば、午後ずっとの期間や車の旅の全ての期間など、非常に劇的な記憶喪失の期間を報告することがあります。特に解離性発作の患者さんでは、発作の直前の症状を記憶喪失することがよくあります。

このように、まとまった時間が失われる場合は、解離性健忘である可能性が高いと考えられます。解離の一般的な意味については、解離性症状をクリックしてください。

解離性健忘では、次のいずれかの理由で何も思い出せません。

[翻訳者:是木明宏]