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どのように症状が生じるのか?

 なぜこのような症状が起こるのでしょうか?ここで「症状が引き起こされるのはなぜ?」と「症状を引き起こしているのは何?」という二つの疑問を分けて考えることが重要です。

どのように症状が生じるのか?

 まずは後者の質問である「症状を引き起こしているのは何?」、もしくは「症状がどのようにして生じるのか?」からご説明したいと思います。このWebsiteで説明しているFNDの全てについて言えることですが、これに対する基本的な答えは、神経系の働きに問題があるということです。

 脱力症状や運動症状といった症状は、脳が身体にメッセージを送る過程での問題です。また感覚鈍麻や疼痛といった症状は、脳が身体からメッセージを受ける過程での問題です。機能性けいれんや解離症状では、その間は脳がトランス様状態、催眠状態に似た状態になっています。

 FNDの患者さんや慢性疼痛のような関連疾患において、神経系に何が起こっているのか、その複雑さが理解されつつあります。FND患者の脳の機能画像では、脳のいくつかの部位が過活動もしくは低活動していることが示されています。いくつかの研究をご紹介いたします。

機能性感覚症状における脳の低活動領域

この研究では、体の片側にしびれや脱力を感じるFNDの方4名に、脳の血流を測定するSPECTという機械でスキャンを行いました。

片側性の感覚障害

彼らは症状があるとき及び症状が改善された後にもう一度スキャンされました。

重要なのは、この検査は、通常のMRI検査のように脳の構造ではなく、脳の機能を調べるものだということです。。

このスキャンでは、症状があるときに、脳の視床と呼ばれる部分がうまく機能していないことがわかりました。黄色で表示されていますね。もし脳卒中だったら、体の反対側にしびれが出るでしょう。

黄色の部分が、反対側に症状のあるFND患者で低活動が認められた部位です。Vuilleumier P, et al. Brain 2001; 124: 1077–1090.

症状が改善された時には脳スキャンでも改善されました。

脳のAgencyネットワーク

FNDのもう一つの重要な研究は、機能性振戦を持つ8人の人々を対象に、fMRIを用いて彼らの脳活動を調べたものです。脳の構造ではなく、機能を見ることができます。

この研究では、ヴァレリー・ヴォーン教授とマーク・ハレット教授が率いる研究者たちが、機能性振戦が起こっているときの脳活動を、被験者に意図的に振戦をさせたときの脳活動と比較しました。その後、スキャンを比較して、その違いを確認したのです。

機能性振戦で低活動を認めた右の側頭頭頂接合部:Voon et al Neurology 2010; 74: 223–228.

その結果は実に興味深いものでした。機能性振戦では、右の側頭頭頂皮質と呼ばれる脳の領域が不活性であることを発見したのです。この領域は、脳内のネットワークの重要な「ノード」であり、私たちが自分の行動をコントロールできていることを知るのに役立っています。私たちはこれを「Agency」のネットワークと呼んでいます。そのネットワークが、FNDではあまりうまく機能していないのです。このことは、FNDにおいて、随意運動に見えるものの運動を制御できていないと実際に感じる体験を説明するものでしょう。

FNDは幻肢症候群とは反対です。

幻肢症や幻肢痛という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、手足の切断を受けた人が、手足がまだそこにあるように感じることです。幻肢の研究では、脳内の手足の「地図」がおかしくなっていることがほとんどであることが示されています。

新しい情報が入ると、脳の地図は変化するはずです。つまり、左足を失ったら、脳は「更新!左足はもうない」と認識するはずです。ところが、幻肢ではこの更新のプロセスがうまくいかないのです。神経科学者は、脳が、足がそこにあると強く「予測」しているのだと考えています。あまりに強力で、その人の中で何年も続いているので、足がなくても足を予測することを止めないのです。そして、もし脳が足があると予測したら、その人は足がある!と感じるでしょう。

FNDでは、同じようなことが起こっているのではないかと考えています。しかし、足がそこにあるという強い予測の代わりに、さまざまな理由で、脳は足がそこに「ない」という予測をするようになるのです。

ここでも問題なのは、脳が「足はある」というメッセージを受け取っているにもかかわらず、「ない」という予測が強すぎることです。「幻肢」と同じように脳は更新しないので、人は感覚ではなく、予測を経験することになります。

なぜ脳は「手足がない」と判断するのでしょうか?理由はたくさんあります。

・痛みがあり、その感覚を取り除こうとしているから。
・片頭痛や他の奇妙な神経症状があり、脳を戦闘モードや逃走モードにし、体のその部分をシャットダウンしようとしているから。
・以前から脅威的な出来事に反応して体の一部をシャットダウンするのに慣れているから。

慢性疼痛と脳

慢性疼痛では、通常のスキャンでは見ることのできない多くの変化が神経系に起こることがわかっています。これらの変化は、神経終末、脊髄、そして最も重要なのは脳で起こります。

神経系には、小さなボリュームノブのような働きをする一連のプロセスがあります。慢性的な痛みがある場合、この小さなボリュームノブが大きくなり、痛みに対する感受性が高まります。

これはハードウェアというよりソフトウェアに問題があることに似ています。

このサイトのメディアセクションに、慢性疼痛と神経科学を説明するビデオをいくつかまとめました。

脳が正常に働いていないことを「証明」するためにスキャンをすることは可能ですか?

現時点では、これらの技術はすべて、研究にのみ適しています。FNDを診断したり、「証明」するために機能的ニューロイメージングを行える状態にはありません。

FNDを持つ人々が、何が悪いのかの証拠を欲しがるのは理解できます。それは、スティグマ(偏見)や、「本当に」症状が生じていると信じていない人を減らすのに役立つかもしれません。

しかし、FNDの患者を診る神経科医としては、私は患者を信じるためにスキャンを必要とはしません。他の疾患を持つ患者の多くも、スキャンは正常です。

ハードウェアでなくソフトウェア

神経系で何がうまくいかずFNDを引き起こすのか、まだ分かっていないことがたくさんありますが、完全に謎というわけではありません。

他の多くの神経疾患では、多発性硬化症のようにスキャンで、あるいはパーキンソン病のように顕微鏡で、問題が何であるかを見ることができます。

FNDの患者さんは、神経系にダメージを受けていないので、スキャンで見えないのも不思議ではありません。その代わり、神経系が適切に機能していないのです。

コンピュータに例えるなら、ハードウェアの問題ではなく、ソフトウェアの問題があるようなものです。コンピュータにソフトウェアのバグがあると、クラッシュし続けたり、動作がとても遅くなったりします。コンピュータを開けて部品を見ても、その問題は解決しないでしょう。 コンピュータをレントゲン撮影しても、何も映らないでしょう。

どのプログラムが問題を引き起こしているのか、コンピュータを再プログラミングして解決しなければならないのです。

人間はコンピューターよりも明らかに複雑です。私たちの思考、行動、感覚、感情は、私たちのプログラムです。

これは、次の「なぜこの症状が起こったのか」というセクションにつながるもので、そのセクションでは機能性の症状を起こしやすい人の特徴について述べています。

[翻訳者:是木明宏]